最高裁判所第一小法廷 昭和31年(あ)1597号 決定 1956年8月30日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人山崎秀治の上告趣意第一点は、事実誤認の主張であり、同第二点は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主張を出でないものであって、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。同第三点は、違憲をいうが、所論選挙権、被選挙権の停止は、公職選挙法二五二条第一項所定の刑に処せられたという事実に伴い法律上当然に発生する効果であって、裁判により形成される効果ではないから、その停止を違憲であるとする主張は、原判決自体の違法を主張するものということができず、上告理由として不適法であることは当裁判所の屡々判示したところである(判例集八巻六号九七一頁以下参照)。そして、同条三項の規定は処刑者の利益のために右の法律上の当然の効果を発生せしめず若しくはその停止期間を短縮するか否かの量刑的裁量(判例集八巻六号七九四頁以下参照)を刑の言渡裁判所に与えたに過ぎないものであるから、右停止期間を三年に短縮した原判決を非難する所論は、結局量刑不当の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、記録を調べても、同四一一条二号を適用すべきものとも認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)